補強トレの重要性 五輪で勝てる選手を育てる方法とは?

体幹トレーニング

補強トレの重要性 五輪で勝てる選手を育てる方法とは?

【トークイベント】青学駅伝チームの強さに迫る!

~ 青トレ ~ 2016年11月29日

青学駅伝部を支えたトレーナーが語る補強トレの重要性 五輪で勝てる選手を育てる方法とは?

 今回は若手世代のマラソン挑戦について、青山学院大の箱根駅伝3連覇を支えたフィジカルトレーナー、中野ジェームズ修一さんに話を聞いた。
リオデジャネイロ五輪には出場できなかったものの、2020年東京五輪に向けて、大学生世代の選手たちがマラソンに挑戦する機会も増えてきた。
しかし「若いうちからマラソンに挑戦する」ということはケガや故障のリスクがないのだろうか。

現代の選手は腱や骨が弱くなっている

――2020年東京五輪が近づき、フルマラソンに挑戦する大学生も増えてきました。この現状に関して、トレーナー視点として、どのような意見をお持ちでしょうか?

 私たちは青山学院大で原晋監督とともに学生選手の体作りを担当していますが、大切に考えていることは、あくまでもフルマラソンを目的としていることです。

 当然、距離が長くなれば長くなるほど、体に余計な重さをつけたくありません。逆に距離が短くなった場合は、重さはあってもいいのですが、パワーを付けたい。ですから(箱根駅伝などの)20キロと(フルマラソンの)40キロでは倍の距離なので、体作りのバランスも変わってきます。

 青山学院大の選手たちには、フルマラソンを目的としてメニューを考えていますが、それはいずれ「世界を狙う」という目的でして、原監督のオーダーでもあります。ですので、昨年の東京マラソンでその成果が出たのは望んでいたことでしたし、良い傾向にあると思っています。

出典 http://sports.yahoo.co.jp

――具体的にはどんなトレーニングの違いがあるのでしょうか?

 当然、短い距離になればなるほど、強い力が必要ですので、アウターマッスルという外側の筋肉がメインになります。ですが、距離が長くなれば長いほど、持久力のある筋肉のトレーニングが重要で、さらに外側に余計な重さをつけず、最低限の筋肉で効率よい走りに特化しないといけません。

――フルマラソンでは大体1キロ3分前後、20キロでは2分50秒前後のペースとなりますが、やはりそこで体にかかる負荷は変わると?

 かかる負荷というよりも、使うパワーがどれだけなのかです。短い距離ならパワーが必要になりますし、長くなると持久力が必要になります。もともと、トレーニングというのは非常にきついです。楽なトレーニングでは体は変わりません。ですから練習以外でトレーニングをさせるということは、選手にとって負担になります。

 特にマラソンのようなスポーツだと、疲労を早く抜きたい。疲労が溜まっている状態だと、いい練習もできませんし、レースもできません。ですからトレーニングによる余計な疲労をかけたくないので、より効率的で最低限なものを取り入れています。

 また大きな負荷を加えると、今の若い子たちはそれだけでも体に過剰な負担がかかってしまい、リカバリーしずらくなってきています。やはりそこは今の大学生もそうですが、高校生も含めて体が弱くなってきていることが要因です。

基礎的な補強トレーニングは高校時代に見につけて欲しい

――補強トレーニングの重要性というのはどんなところにあるのでしょうか?

 トレーニングの知識がない人たちは、「若いときにトレーニングをさせてはいけない」と言われます。ですがそれは、トレーニングの専門家からしたら、本当にちゃんと知ってから発言して欲しいです。

 過剰に筋力トレーニングをさせると成長痛が出たり、骨が柔らかい段階でやってしまうと骨に異常が出たりと、成長段階でトレーニングをさせすぎると問題点もあります。ですが、それはどれだけの負荷を加えるのか、どれだけ関節を曲げるのか、どういう風に負荷をかけるのかを考えれば、まったく問題がないのです。昔の人たちは、比較的、トレーニングをしなくても走れたのですが、それは先ほども言いましたが体が丈夫だったからです。ですが今の子たちは、小学生、中学生からでもトレーニングさせないといけないぐらい、体が弱くなっています。

 スポーツの練習メニューをこなしているだけでケガをしてしまう現状では、補強トレーニングはものすごく重要で、フィジカルトレーナーの需要は今後もっと増えてくると思います。最近は大分、選手に帯同するフィジカルトレーナーも増えてきましたが、それはいい傾向だと思います。

――その中で著書の「青トレ」でも注目が集まりましたが、箱根駅伝を制した青山学院大が取り入れているトレーニングが効果を発揮したということなんですね。

 私が青山学院大の選手に一番最初にやってきたことは、体を安定させる。体幹を使って安定させるということでした。しっかり体を安定させれば、フォームも良くなりますし、タイムも上がります。また障害予防にも、ある程度効果が出ました。

 また同時にケアも徹底しました。ストレッチやアイシングという基礎的なことです。そのために筋肉の部位とメカニズムを全部教え、何の筋肉を、どのように作用させるかを筋肉図を見てもらいながら、覚えてもらいました。それによってケアに関しても、今までもストレッチはやっていましたが、伸ばしている筋肉と、伸ばしていない筋肉がどこなのか、そしてアイシングをどうやればいいのか、どう巻けばいいのかを教えました。

 強化に関しては、その後に続けてやっています。

――最初に基礎的な部分を徹底させ、体を守るためのトレーニングや知識を付けさせたと。

 ただ本来それは、高校時代にできていて欲しいです。ストレッチのやり方、アイシングのやり方、準備運動のやり方も分からない状態で大学に来るのではなく、高校時代に教わっていて欲しく、大学に入ったら専門家のトレーナーにつき、強化トレーニングプログラムをもっとやって欲しいです。

 そうすれば、大学の間に実業団でやっている強化プログラムを4年間しっかりできたら、その中から五輪を狙える選手が出てくると思うんです。

 何故、大学時代に五輪を狙って欲しいかと言いますと、五輪は4年に1度しかありません。ということは、実業団に入ってからだと、チャンスは1度か2度。しかし、大学からできれば、3回のチャンスになるかもしれないからです。
 五輪に出場するには、運やタイミングが必要です。その時の気象条件だったり、体調面の調整だったり、それをたった1回のチャンスにすべてをかけるのはものすごく大変です。それが3回のチャンスになれば、可能性は変わってくるのです。ですから、私はフィジカルトレーナーとして、それを支えたいと思っています。

出典 http://sports.yahoo.co.jp

五輪で勝つにはフィジカルが強い選手の育成を

――トレーニングの順番や重要性について分かりました。一方で、練習メニューの走りこみにはどんな良い点や悪い点があるのでしょうか?

 結局、走ることのメリットは多いです。走らないと作った筋肉の使い方は習得できないですし、あと長距離では心肺持久力と筋持久力の両方がないと耐えられません。心肺持久力を付けるためには、走りで心拍を上げないと、力がつきませんので。

――一方で大学生ランナーに、いわゆる「サブ10」2時間10分を切るタイムを求めるのは、トレーナー目線としてどのようなお考えでしょうか?

 私はリオ五輪も会場で見ていましたが、やはり8分台で走れれば表彰台に上れるチャンスがありました。つまり、2時間8分台を出すことで、「世界と戦える」という自信になるのです。それが2時間10分を切れないと、確実にメダルを狙えませんし、世界と戦える自信がつかず、練習の調子も上がらないと思います。

 ただ最終的に重要なのは、タイムというよりも、どれだけフィジカルが強いかです。それはどれだけ圧倒的な筋持久力と、圧倒的な心肺持久力があるかどうかということ。リオ五輪もそうでしたが、タイムはそれほど良くなくても、差が出た部分はスピードの上げ下げの駆け引きで相手を振り落とす力でした。これはフィジカル能力が高い選手にしかできません。ですから、歴史に残るような世界記録を残したいというのなら別ですが、五輪のことを考えると、そういう駆け引きが重要になってくるのです。

 フィジカルが強ければ、自分から駆け引きができるようになります。タイムだけをおって必死に練習していてもフィジカルが強くなるわけでなく、そういう点で、日本人選手は圧倒的にフィジカルが弱いです。

 ただフィジカルを強くするためのトレーニングメニューは、ベンチプレスを挙げることではないんです。未だにトレーニングといったら、そういうメニューを考えてしまう方が多いのですが、長距離走者にそういうことをさせてしまうことに疑問を感じます。

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